•  マッキー

14. 春ですね。

 「今年はどうでしょうかね」 春が近ずいてくると釣り人たちは落ち着かなくなりますね。「川の状態は」「最初はどこに入ろうか」「なんとか尺を」「新しいフライ創ったんだ」なんて頭のなか釣りでイッパイになって,むずむず、もぞもぞしてくるんですね。まさに、春、釣り人うごくというところです。

 先日,そんな話をした日に釣り仲間と呑みにいきました。天神下のシンスケ、東京で一番古いのみやです。そこにつまみを書いた短冊がずらっと貼ってあるんですがこの時期とくににぎやかです。菜の花のからし和え,春せりの胡麻和え,春キャベツと帆立のサラダ,水菜とじゃこサラダ,新天豆,山菜天ぷら、若竹煮,白魚卵とじ,さより昆布じめ。焼き蛤、深川豆腐などなど。短冊の墨の字が若草色にみえちゃうくらいで飲み屋も春でした。町育ちにとっては飲み屋での山菜というのは、おっ、春だなってうれしいものです。

 釣り人にとっての山菜は解禁当初にはつきものですから、行ったさきの宿や飲み屋でも出会えます。このとりたての山菜はもひとつ贅沢で、香りといい、歯ざわりといい、町で食べる山菜とはちがう旨さがあります。釣りの楽しみのひとつです。

 山梨の湯川。JFFの土居さんと一緒でした。くたびれて日溜まりに横になってると,すぐ脇の崖を土居さんがすすっと登ってとってきてくれた”ウド”はうまかった。取り立てだからエグくないし冷たくて水気が多く味噌と香りが、うつらうつらした頭にからんで特別だった。土居さんは春になるといつも小さなタッパーに味噌を持ってる釣り人なんです。

 北海道の戸蔦別川。なぜか人里離れた奥にレストラン「山渓」がある。ここのカツカレーはこの川に入る楽しみのひとつです。(最近は営業日が土曜日だけのようだからチャンスがない)5ミリほどの薄さでカリッと揚がった紙カツにカレーのルーがかかってるだけなんだけれど,川から上がっての冷たい生ビールとのコンビはたまりません。この店で近所のおじさんに二番ウドなるものををもらいました。長さが60センチほどで葉っぱがついてて、筋が細く柔らかく不思議なウドでした。ロッジにもどってさっそくいただいたんですが、香りが強く甘みがあって妙にうまかった。野菜にかぎらずなんでもそうだが、一番のあとに出る二番ていうのはエグくてかたくて駄目なものと決まっているんですが、このウドは採ってきたおじさんが二番だっていうんだからそうなんですね。そうだ、このときも土居さんがいたんだ、で、名人も知らないっていうんだから不思議なウドなんですよ。

 5月の道北。猿払川,猿骨川のイトウ釣りはいついっても寒いんです。オホーック海から吹き込む風は強く冷たく、雪が横から降ってくるんですから、軟弱者はすぐめげて極寒用のシュラフにもぐりこんで釣りどころじゃありません。そんなとき地元の釣り人から”たらの芽”と天ぷら鍋一式の差し入れがありました。ちっさなログハウスの 真ん中にどーんとおかれた鍋をかこんで、うれしかったねー。缶ビール片手にふっくらとしたたらの芽が揚がるそばから、私は他の人のことなど気にもしないでかかえこんで、ひとり夢中で食べてました。たらの芽というと、旨いんだけれどこの手前勝手なことが恥ずかしく思い出されます。

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